角田郁雄(オーディオ評論家)
私の愛用のSACDプレーヤー、MPS-5は、すでに2度のアップグレードが行われた。最初は、内部のデジタル回路をサポートするスイッチング電源だ。3つの独自のプログラムを投入したデジタル処理部のコアとなるFPGAを動作させ、パネル表示、高速回転するSACDドライブエンジンなどに瞬時に電力を供給する大切な電源である。このアップグレードにより音の透明度が増し、さらに解像度の高いワイドレンジな再生音へと変化した。
次のアップグレードは384kHz/24bitと5.6MHzまでのハイレゾ音源をUSB再生で可能にするオプションボックス、USB-Xの登場だ。USB-Xの内部にもFPGAを使用し、ネイティブとDoP再生の両方に対応させ、ノイズレスのスムーズな再生を実現している。とりわけ、5.6MHzDSDの豊かな倍音再現はアナログレコードの質感と同等に思え、ダイナミックレンジの広さとワイドレンジなスケール感に感激する。
そのMPS-5の次の進化は、このUSB-Xを標準化し、ワイヤーワールドのシルバーOCC導体を使ったPlatinum Electra PEP/1.5m電源ケーブルをプレイバックデザインズの認定オプションとして付属。今回、MPS-5X Ultimateとして、発売することになったのである。
これは、愛用者である私もかなり気になる話である。
私は早速にPlatinum Electra PEP/1.5m電源ケーブルを試聴しアップグレードしたが、大きく変化したのは空間性である。楽器やヴォーカルの配置関係をより明確にし、俊敏な立ち上がりを示し、演奏をよりリアルにしている。同時に音の消え入るような弱音を浮き上げる効果があり、演奏上のちょっとした動作もよりリアルになり、音楽に深みを加えてくれる。言い換えれば、静寂感と繊細性も高まったと言えるのである。これは再生音源を新たにDSDリ・マスターしたような感じだ。
すでにMPS-5を愛用されている方は、一度ショップで試してみると良いであろう。
これから、MPS-5XUlimateを聴かれる方はきっと聴き慣れたディスクやハイレゾ音源から空間性に溢れ、高密度で、倍音豊かなワイドレンジの音楽の世界が聴けることであろう。再生した音楽に私が感じたように新たにDSDリ・マスターされたかのような感覚を体験されることであろう。