オーナーであり、ケーブルの設計者でもあるDavid Salz(デヴィッド・ザルツ)氏を中心に、ケーブル作製において次々に革新的技術に取り組みまた、自社ケーブルを公開でテストする唯一の会社が、アメリカのケーブルブランドWireworld(ワイヤーワールド)です。
機器間の音楽信号の伝達において優良なケーブルを使用する事は、機器の能力を引き出すのに外してはならない要素となっています。
Wireworldのケーブルの基本コンセプトは、「ノーコンタクト」 「ノンカラーレーション」。
「ノンカラーレーション」の意味は、ケーブルで「音を作る」のではなく「機器の能力を最大限引き出す」 と言ったコンセプトです。
デヴィッド氏はそれら「ノーコンタクト」「ノンカラーレーション」をゴールとして掲げ、それに向かってケーブルを作り続けているのです。
ゴールを設定し、それに向かって進む。自身の設定したゴールがあるからこそ、時として今までの概念を覆すブレイク・スルーを成し遂げられるのです。
デヴィッド氏は日常でプライベートで工作を趣味としており、目を輝かせながら自分が設計・制作した作品の説明をしたのが印象的です。
その工作好きが功を奏し次々と新たなアイディアを生み出し、1992年のWireworldの立ち上げ以来、オーディオインターコネクトケーブル、スピーカーケーブル、デジタルケーブル、光ケーブル、HDMIケーブル、USBケーブル等多岐にわたり、様々なハイクオリティなケーブルを作り出しています。
進化は止まりません。何故なら自身が設定したゴールに近づく為に、日々突き進んでいるからです。
デヴィッド氏のあくなき追求心でWireworldは次々に新しいデザインのケーブルを生み出し、その卓越した伝達能力は驚きをもって世界のオーディオファイルから迎えられ、高い評価を得ています。
Wireworld USB2.0 ケーブル構造の秘密公開(pdf)
David Salz 日本訪問 |
アメリカのケーブルブランドのWireworld(ワイヤーワールド)の社長兼デザイナーのDavid Salz(デヴィッド・ザルツ)氏が日本に訪問したのは2009年10月の東京インターナショナルオーディオショウ。
その日本訪問時、色々な話を聞く事が出来ました。
ワイヤーワールド David Salz氏のコメント
「ワイヤーワールドは「More Dynamics , More Expressive」という心に訴えるような音楽を表現出来るケーブルを作る事が目標です。つまりそれは伝送損失が無い状態であり、ノンカラーレーションなのです。
最初にケーブルを設計した時、ごく細かいところまで高い精度をとれる構造として、二重同軸構造を採用しました。
ケーブルのカット面では完全に左右対称を保てる利点があり、設立当初の1992年から2005年初頭頃まで、二重同軸構造でケーブルデザインしてきました。
しかし厳密に言うと二重同軸構造は、一種の妥協みたいなものがあったのは否めません。それはケーブルを使用する時は必ずといって良いほど曲げなければならない部分があるからです。
二重同軸構造は、ケーブル自体が真っ直ぐな状態であればプラスとマイナスの導体の間隔は設計通りの状態を得られます。
しかし実際ケーブルを使用するにあたって、CDプレーヤーからアンプ類、またスピーカーへの接続の際はケーブルを曲げて使用せざるを得ません。
曲げた事によりケーブル内部での間隔の違いが生じ、曲げられた部分で発生する電磁気の関係、相互の干渉の仕方が変わってしまいます。 つまり曲げた時にケーブル内部の精度が変わり正確な信号伝達が出来なくなってしまうのです。
導体の間隔を50μm(0.05mm)変えた何種類かのケーブルを試作で作りそれを試聴した際、音に違いがある事に気がつきました。
それだけでも影響があるのに、曲げた部分の均一性が保たれていない場合など、ケーブル全体で考えると大きな差異が生じている事になります。
その差異からタイミングエラー、インダクタンスロスや磁性引力のエラーが発生し、音にとって悪い影響を及ぼすのです。
しかしその問題を解決したのが新構造であるDNA design(電気の流れを中性化・正確にする並行配列構造)です。
この構造は導線を均一に横並びにしたもの。インターコネクトケーブル等、外観が丸型のケーブルにはHelix DNA(Helixは螺旋を意味)、スピーカーケーブル等のフラット形状のケーブルにはDiagonal DNA(Diaginalは斜線型を意味)を採用し、断面だけでなく、ケーブル全体の精度を均一に保つ画期的な構造になるのです。
ケーブル断面はもちろんの事、ケーブル全体でも均一に精度が保てます。
これによってタイミングエラー、インダクタンスロスや磁性引力のエラーが発生しません。
信号の減衰は静電容量だけで決まるのではなく、インダクタンスも重要な要素です。二重同軸構造ではこれらはコントロールしきれなかったが、DNA designはケーブル全体の精度が高い事によりきっちりとコントロールできます。」
以上、今回日本に訪問した時に、デヴィッド氏がコメントしたものです。
ケーブルの試聴での印象は、デヴィッド氏が言っていたように、よりハイレベルでのノンカラーレーションを実現しています。
伝送ロスが極端に減ったという印象。機材の音質が正確に表現されている感じで、ケーブルによる色付けが無いナチュラルな再生です。
2004年の夏頃、デビッドに会った時に聞いた話は、
「私の人生で一番大きな発見をしたんです。新シリーズのケーブルでその構造を取り入れようと考えていてね。早く完成させるから、聴いて欲しいです。」
それはワイヤーワールドで採用されている新構造の DNA Designの事を言っていたのだと気付いたのは後の事でした。
今回の訪問で見せてもらって非常に興味を引いたのが、RCAの端子と端子をつなげた物(0cmケーブル)でした。
これはケーブル部分が全くない0cm(ゼロ・メートル)ケーブルで、ケーブル部分が全くない究極の信号伝達を可能にする、理想的なリファレンスケーブルです。
Wireworld(ワイヤーワールド)設立当初から、これを使用しています。
デヴィッド氏は「このケーブル(アダプター状のRCA端子)を接続して聞いて、これに如何に近づけるかを目標にしてケーブル製作しています。この端子で、ケーブルのカラーレーションが無い音を知る事が出来ました。ワイヤーワールドにはノンカラーレーションと言うゴールがあって、そのゴールに如何に近づけるか大切だと考えている。だから時として今まで正しいと思っていた事を疑ってみる事で、ブレイクスルーを得られる事がある。DNA designはそうして考え付いたものなんです。」
デヴィッド氏の人生も、ケーブル作製に込められているようなコメントでした。
デヴィッド氏のアイディアはとどまる事を知らず、USBケーブルや新構造のシリーズ6 HDMIケーブルも考案中。(2009年10月5日現在)
またWireworldのオリジナル絶縁対策のCDTテクノロジーもシリーズ6のインターコネクトケーブルやデジタルケーブル等に採用されております。(2009年10月5日現在で特許申請中)
デヴィッド・ザルツ氏は次々に新しいアイディアを生み出します。
ゴールに向かって日々チャレンジしている姿から目が離せません。新たな製品の開発が楽しみです。