徹底したこだわりの数々が盛り込まれた理想のアンプ群
精密工業大国、スイスに誕生
アルミ削り出しのゴールドのフロントパネルと、レッドのサイドパネル。数あるオーディオ機器の中でもとりわけ“上質”と“音への情熱”を感じさせるダールジールの製品は、いまや世界中のオーディオファンから垂涎のまなざしを浴びる存在として揺るぎない地位を獲得しています。
この評価の理由は、設計思想に秘められた高い音楽性と絶大な信頼性にあります。
ダールジールが創業したのは2000年。時計や光学機器といった、さまざまなエンジニアリングの中でも、とりわけ精密さが要求される分野で世界的な評価を受けるスイスに誕生しました。その確かなクオリティは、処女作であるNHB-108 model oneで全世界のオーディオファンへ知れ渡ることとなりました。
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darTZeel社設立と共に生み出された、パワーアンプNHB-108model oneの第一号機。 |
NHB-108 model oneは設計者であるエーベ・デレートラ氏の16年にも及ぶ研究の末誕生したモデルです。トップパネルのガラスからは、一切の無駄を排した芸術的ともいえる内部構造を見ることができます。この美しい内部のレイアウトは、熟練した職人達だからこそなせる業であり、ダールジールの真髄となっているのです。
ベースにあるのは“ひとりの音楽ファンとしての情熱”
驚異的な作り込みが行われているダールジールですが、同社を含むスイスのメーカーには、ある大きな特徴があります。それは一社で全ての工程を行うのではなく、設計、製造、アッセンブルなど、それぞれの分野のトップレベルの卓越したスペシャリスト達がパートナーシップを組んで製品を完成させるということです。
自社制作にこだわりすぎて外からの技術等の情報が遅れる事があると、自社の技術だけでは追いつくまでに多大な労力が必要となりますが、パートナーを組む事で常に新い技術を取り入れた製品を生み出す事ができます。
ダールジール自体は全4名という少数精鋭体制ですが、こうしたスペシャリストパートナーを合わせると、総勢60名程が同社のアンプに関わっていることになります。つまりダールジールは、さまざまなアイデアを生み出す“ブレーン=脳”のような役割を果たしているのです。
そのなかでも中心となるのは、設計者であるエーベ・デレートラ氏です。
エーベ氏は自身も数千単位のレコードコレクションを所有するなど、熱狂的な音楽ファンでもあります。
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自宅にあるレコードコレクションの一部。 自身も音楽ファンで、自宅やオフィス、友人に貸したまま戻って来ない物等含めて、数千にも及ぶレコードを揃えています。 |
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darTZeel Herve氏の試聴室。 日々音楽に触れて新たな製品のアイディアを考えてます。 この試聴室で製品の音の最終決定を行なっています。 |
自宅の試聴室で日頃から音楽に触れながら、製品のアイデアを産み出していくのがエーベ氏のスタンスです。同氏の設計したパワーアンプには”NHB”というイニシャルが与えられていますが、これは”Never Heard Before“の略、つまり「いまだかつて聴いたことのない」という意味です。ダールジールの製品のポテンシャルの高さは、こうしたひとりの音楽ファンとしての情熱が込められているともいえるでしょう。
エーベ氏が思い描いたアイデアは、まず自身の手により設計が行われ、その後パートナー達の手に委ねられます。一度パートナーの手に渡った仕事も全てエーベ氏が厳しく管理し、納得がいかなければ何度も作り直しを求めるなど、そこに妥協は一切ありません。
当初、ダールジールの製品は全て完全自社にて開発から設計、アッセンブルまで行っていましたが、同社が世界的な評価を獲得するにつれ“より安定してクオリティの高い製品を世界のオーディオファンへ送り出す”ために、こうしたスペシャリスト達と連携することになりました。ダールジールがパートナーを結んでいるスペシャリスト達は、大きく4つの分野に分けられます。
それぞれの分野の“スペシャリスト”による生産体制
まずはCNCパートナー。
主に部品の切削を行うパートナーですが、同社のNHB-458では、機械にアルミの塊を投入してから完成まで、実に45時間もの時間を必要とします。この時間は、熟練したスキルを持つ技術者によるセットアップの時間は含まないもので、実際にはさらに長い時間を要します。しかも、ただ機械で削るだけではなく、ヒートシンクなどのエッジは全てヤスリで削る処理も行っているなど、通常は回避されがちな細かい部分まで、十分な時間をかけて行われていくのです。
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アルミパネル切削は熟練の職人によって作業が進められ、万に一つの狂いもありません。 | コンピューターによって切削のシュミレーションを行い、非常に精密な設計の元に行なわれます。 | ||||||
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ヒートシンクのエッジのヤスリの処理は、高級感を演出するデザイン的な要素のみではなく、ユーザーが怪我をしない様に配慮しています。 | CNCで削り出した(下)後に、ヤスリ(上)で表面の処理を行なっています。 これにより次の工程のアノダイジング処理でカラーリングした時の高級感が変わってきます。 | ||||||
次はアナダイジングパートナー。
CNCパートナーが仕上げたパーツに文字やロゴを彫ったり、カラーリングを行うなど製品の“仕上げ”を決定するのに非常に重要なポジションとなるパートナーです。ダールジールの色ムラのない、かつ上品なゴールドとレッドのコントラストは、このアノダイジングパートナーによって生み出されていきます。
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塗料を入れた水槽で長時間浸されて、CNCで処理されたパーツに得も言われぬカラーリングを施します。 |
難しいとされるアルミに美しいまでにカラーリングされたパーツ。 これらの全体の組合せが製品の質感を生み出します。 |
レーザー等でアルミパネルに文字を付けていきます。 美しい彫りの文字は全体の高級感の一助となります。 |
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PCBパートナー
そしてエーベ氏が“最もキーとなるパートナー”と語るのが、PCBパートナーです。主にエーベ氏が考案した基板デザインを具現化するためのパートナーで、音質面での完成度に大きく関係しています。現在ダールジールがダッグを組んでいるのは、すでに数々のハイエンドメーカーで高い実績を上げているスペシャリスト集団で、完成した基板は全て彼らによってチェックされたのち、後述のアッセンブリーパートナーもチェックを行うなど、ダブルチェックの体制を敷いています。
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キーパートナーとなるPCBパートナーに依頼し作成される、エーベ氏の設計アイディアを盛り込んだ試作品。 納得のいく高いレベルの製品を生み出すまで、何度も作り直しをしていきます。 |
非常に整った環境のPCBパートナーのオフィスとラボラトリー。 新しい製品の構成を練り上げたアイディアをここで実現していきます。 |
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PCBエンジニアは、エーベ氏とのエピソードを次のように語ります。
「エーベ氏の理想は本当に高いところにあって、完成した基板に対し作り直しを求めることは日常茶飯時です。でも、これは僕らPCBエンジニアには非常に興味深いことで、僕らをさらなる高みへトライさせてくれるという貴重なチャンスを与えてくれるということなんです。
一般的なメーカーのメインエンジニアは、早く製品を生み出したいあまり、こちらが拍子抜けしてしまうくらいあっさりとOKを出すこともあるのですが、エーベ氏が相手だとまずそうことはない。彼が納得するまで、僕らも技術をどこまでも突き詰めることができるんです。」
このエピソードは、エーベ氏の製品に対する情熱を物語るだけではなく、とことんにまで磨き上げられたプロフェッショナルとしての意識を持つパートナーに恵まれている事を表します。高次元のプロフェッショナル達とパートナーを組み、エーベ氏は製品開発にエネルギーを注ぎ込む事が出来、さならる魅力的な製品開発に取り組む事が出来ます。
絶対的な信頼性を実現する、確かな管理体制
こうして各々のパートナー達の手によって仕上げられたパーツは、最終的にアッセンブリーパートナーによって、さらにチェックを重ねられたのち、組み上げられていきます。このアッセンブリーパートナーはダールジールの社屋のすぐ隣にあり、いつでもエーベ氏自身が品質をチェックできるという環境が整っています。
製品が組み上がってもすぐ出荷するのではなく、何回もじっくりと時間をかけて製品のクオリティがチェックされます。これは同社が目指している “20年故障無しを目指す高い信頼性” を実現するためのものであり、事実ダールジールの製品は不良が非常にに少ないことで知られています。これがダールジールの絶対的な信頼性に繋がっているのです。
シンプルな設計、強固な信頼性、そしてそれらによって実現されるピュアな音質。言葉に表すのは簡単でも、実現することは極めて難しいこれらの理想を、徹底したこだわりのもと実現しているのがダールジールです。現在世界45カ国のオーディオファイルに愛されるその存在は、ピュアオーディオを語る上で欠かすことのできないブランドとして、揺るぎない地位を確立しています。そのベースには、こうした妥協ない製品作りがあるといえるでしょう。