BD史上最高の音を聴く!
2012年 8月号 Stereo Sound HIVI 掲載
スウェーデンのオーディオ専業メーカー、プライマーから登場したユニバーサルBDプレーヤーBD32。
国産機では類を見ない、ハイエンド流儀の造り込みで本格的な音を聴かせてくれるモデルだが、ここでは同社製最新セパレートアンプやオルフェウス製マルチチャンネルアナログ入力付プリアンプなどを組み合せて、その実力を徹底検証してみたい。
久々に登場したスーパーHiViコンポーネントを前に、胸が高鳴る!
山本浩司
プライマーのBD32の概要については本誌5月号で書かせてもらったし、HIVI6月号(2012年)でも高津修さんが視聴リポートを寄せている。
本稿と併せてお読みいただければと思う。
BD32は、3Dを含めたブルーレイディスクの他に、現状考えられるすべてのハイファイ系12cmディスクが再生できるそのユニバーサリティが最大のウリ。
元になっているのは米国オッポのBDP93で、この製品をベースにアナログ音声回路と電源回路、筐体をプライマー流儀で磨き上げたモデルと大略理解していいだろう。
本機でまず注目したいのは、北欧のオーディオ機器ならではと思わせる洗練された完成度の高いデザイン。
同社30シリーズと共通するアルミ・ヘアライン仕上げのフロントパネルが美しく、トラック形状をうまくあしらったトレイ周りの処理やフォントの選択、白色有機ELディスプレイの見せ方など、じつにスマート。
金属製大型フットで3点支持された筐体自体は手にずしりと重く、いかにもいい音がしそうな雰囲気だ。
では、まず本機のオーディオプレーヤーとしての実力をCDとSACDでチェックしてみよう。
UNIVERSAL BD PLAYER PRIMARE BD32 ¥630,000- (税込定価/スペック) |
●再生可能メディア:CD、SACD(2ch/マルチch)、DVDビデオ、DVDオーディオ、BD(ブルーレイ3D対応) |
●接続端子:HDMI出力2系統、色差コンポーネント映像出力1系統(3RCA)、コンポジット映像出力1系統、デジタル音声出力3系統(同軸、光、AES/EBU)、アナログ音声出力2系統(XLR、RCA)、7.1chアナログ音声出力1系統(RCA)、他 |
●寸法/質量:W430×H106×D375mm/8.5kg |
■マニッシュで力強いコクで聴かせる2ch再生 |
本機のリアパネルを見ると、アナログ音声出力端子が「2chAudio」と「MultichAudio」に分けられており、前者にはXLRバランス出力とRCAアンバランス出力が1系統ずつ用意されている。
両者をデノンの最高級プリメインアンプPMA-SXにつないでメロディ・ガルドーの新作CD「アブセンス」を聴いてみたが、ともに低域から中低域にかけて厚みがあり、ピラミッドバランスをアピールするコクのある音が聴けた。
見た目の印象から、すっきり軽快、繊細な音をイメージされた方は、思わずたじろいでしまうであろうマニッシュで力強い音である。
バランス出力のほうが中高域のヌケがよいが、アンバランス出力もけっして悪くない。
音がよりいっそう前に張り出してくる印象だ。メロディ・ガルドーの秘めやかな音楽には、バランス出力の音のほうがよいと感じたが、お使いになるアンプの都合や好みで選んでかまわない音の差だと思う。
ここでデノンのSACD/CDプレーヤーDCD-SA1を取り出し、BD32と音質比較してみた。
まずわかるのは、BD32のほうが出力レベルが高いこと。そのせいもあり、一音一音の音像がSA1よりも克明で力強く、メリハリが強調される印象だ。
そんな持ち味は、ハモンドB3をフィーチャーしたヒップなオルガンジャズのCD「KANKAWA」でおおいに活かされ、豪快なグルーヴがストレスなく伝わってきた。
そのワイルドでノリのよいサウンドは、のめり込むように聴かせる訴求力がある。
いっぽうSA1は大人のバランスで緻密な音調。 メロディ・ガルドーの音楽は、なるほど本機の解釈のほうが正しいかも? という気もしてくる。
SACD「ア・デイ・アット・ベイシー」からビッグバンド・ジャズを聴いたが、音の肌理の細かさでSA1、ドラム・ソロの迫力でBD32に軍配が上がった。
いずれにしても、50万円台の高級オーディオ専用プレーヤーと比較して、音の好みで違いが語れるという事実に、本機BD32のかけがえのない魅力があると思った。
次にBD32と共通デザインのプライマー製最新セパレートアンプ、プリアンプPRE32 と パワーアンプA34・2を組み合せて、純正本格システムの音を聴いてみよう。
デノンPMA-SXで鳴らした音に比べると、「暴れん坊将軍」なワイルドさが後退し、より理知的でノーブルな音に変貌した。
なるほどこういう音の変化が味わえるからオーディオは面白い。
A34・2はクラスD回路のアンプだが、フィードバックループで終段のローパスフィルターを制御するという面白い手法が採られている。
この清新で緻密、内省的なサウンドは、このA34・2に拠るところが大きいと思えた。
なにはともあれ、このシステムの冴えざえとしたサウンドは、最先端ハイエンド・オーディオの一翼を担うものと言っていいだろう。
CONTROL AMPLIFIER PRE32 (¥315,000-) + POWER AMPLIFIER A34.2 (¥315,000-) |
[PRE32] |
●接続端子:バランス音声入力2系統(XLR)、アンバランス音声入力4系統(RCA)、バランス音声出力1系統(XLR)、アンバランス音声出力1系統(RCA)、テープ入出力1系統(RCA) 他 |
●寸法/質量:W430×H106×D420mm/10.5kg |
[A34.2] |
●出力:150W×2(8Ω)、550W(8Ω、ブリッジモード時)ンス音声入力1系統(RCA) |
●接続端子:バランス音声入力1系統(XLR)、アンバラ |
●寸法/質量:W430×H106×D380mm/10.6kg |
■実在感に富んだアナログマルチch |
では、BD32のサラウンドサウンドのチェックに移ろう。
ぼくが現行製品でもっとも音がよいと考えるAVセンター、パイオニアSCLX85と組み合せ、HDMI接続とアナログマルチch(RCAアンバランス7・1ch)接続の音の違いを確認してみる。
PRIMARE BD32はHDMI出力が2系統あるので、それぞれをパイオニアSCLX85、プロジェクターのソニーVPL VW1000ESにつないで視聴した。
最近お気に入りのブルーレイ、シャーデーとリチャード・トンプソンそれぞれの2011年のライヴ作品(ともに米国盤/DTSマスターオーディオ5・1ch収録)を観たが、このテストでも、アナログ出力のほうがHDMI出力よりかなり出力レベルが高いことがわかった。
聴感で音圧をほぼ揃えて聴き直してみたが、それでもアナログ出力のほうが音の鮮度が高く、力強い。
ホールの臨場感もアナログ出力のほうがより豊かで、シャーデー・アデュのヴォーカルやR・トンプソンのギタープレイがより精妙なニュアンスを伴なって描かれる。
PRIMARE BD32最大の魅力は、やはりこの力感と実在感に満ちたアナログ音声出力にあると改めて実感した。
マルチchアナログ入力付AVセンターをお持ちの方は、積極的にこの出力を活用すべきだろう。
注意しなければならないのは、パイオニアSCLX85の場合もそうだが、多くのAVセンターは、アナログマルチch入力時に内部でスピーカーコンフィグなどの細かな調整ができないこと。
そこで、調整画面を出力し、PRIMARE BD32で各チャンネルのレベル合わせなど(0・5dBステップ)を行なったが、作業はひじょうにスムーズで、まず安心して調整ができることがわかった。
さらに映画BD「トゥルー・グリット」で、5・1ch再生と本機でセンターch信号をL/Rに振り分けるダウンミックス4・1ch再生を聴き比べてみたが、この後者の音がたいへん素晴らしかった。
ヒロインのモノローグの口跡が鮮やかに描写され、じつにキレがよい。
スクリーン下にセンタースピーカーを置いた5・1ch再生に比べて、ダイアローグが画面上によく引き込まれ、映し出された人物がほんとうにしゃべっているような強力なイリュージョンが得られる。
ダウンミックスによる音質劣化はまったくないと言い切ってしまいたい音のよさだ。
■濃密な空気感までを醸す最高レベルの音! |
さて、この音を聴くと本機のマルチchアナログ出力の音のよさをとことん追求したくなるが、本誌上で幾度となく採り上げられてきた、マルチchアナログ入力を備えたプリアンプ、オーラVARIEとアキュフェーズCX260はともに生産終了という残念な状況。
ほかには……
と新製品の中から探してみると、ありましたありました。
スイス・メイドの精密な設計で定評のあるオルフェウスのTWO Version2。
純粋なアナログプリアンプだが、そのアンバランス入力端子を6ch(5・1ch)×1系統、2ch×3系統に振り分けることができる(XLRバランス入力も1系統あり)。
そこで、PRIMARE BD32とオルフェウスのTWO Version2を組み合せ、パワーアンプにPRIMARE A34.2を充て、まずオールバランス(平衡)伝送でCDを聴いてみた。
ダイナミックコントラストの鮮やかな濃い口のサウンドである。
「アブセンス」でのメロディちゃんとヘイター・ペレイラのデュエットではスピーカーの周りに濃密な空気が漂い、ん? 二人はただならぬ関係? と思わせるムード満点の音に。
「KANKAWA」のシンバル・レガートの生々しさもタダゴトではない。 間違いなくぼくの大好きな音だ。 このプリアンプ、うっかり見逃していたが、音のよさで大注目だ。
オルフェウスのTWO Version2はマルチch入力時、6ch個別にレベル(トリム)調整が可能だが、VARIEやCX260にあった4・0ch、4・1chへのダウンミックス機能は有していない。そこで、PRIMARE BD32でセンターch成分をL/Rに振り分け、もう1台PRIMAREパワーアンプA34.2を加えた4・1ch再生に挑んでみた。
この音は、ほんとうに素晴らしかった。
シャーデーのライヴの熱気、R・トンプソン・バンドの息の合ったインタープレイは、まさに眼前でナマを観ているかのような臨場感に満ち溢れていたし、ブルーレイ3D「ヒューゴの不思議な発明」の冒頭の環境音の音数の多さは、これまで聴いた中で最高レベル。
「トゥルー・グリット」の彫りの深い生々しい声の感触もちょっと忘れることのできないものだった。
なお、本機の画質については別稿をごらんいただきたいが、大型電源トランスを積んだリニア電源回路の恩恵もあるのか、艶やかな黒と精妙な暗部階調をアピールする本格的なもの。
ベースとなるオッポBDP93の画質とは明らかに品格の違いがあると思った。
ハイエンド・オーディオが到達した高品位な質感世界にバランスする初めての本格派ユニバーサルDBプレーヤーBD32。
ぜひ多くの熱心なオーディオ/AVファンにその魅力を体感していただきたいと思う。
■BD32お勧めポイント |
BD32の画質調整項目の『カラースペース』を4:4:4/36ビットに設定、つまりY/Cb/Cr それぞれを12ビット出力してソニーVPL-VW1000SEに映像を映し出してみたが、非常に高画質だった。
漆黒の見せ方に独自の魅力を感じさせる、ローライトから黒への描写を重視したコクのある表現。 低輝度部の色乗りがよく、階調表現も精妙だ。
大画面向きの画質傾向であることがよくわかった。
アナログ音声出力はというとBD32のほうが出力レベルが高く、音の力感描写、実在感の高さで上回る印象。
特に、アクション映画を迫力たっぷりに、ジャズやロックのライヴ作品を臨場感豊かに楽しみたいという方には、BD32をお勧めしたい。