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【DJ MOTIVE’s aLFFo MAGAZINE】vol.12 BIRD MUSICを巡る想い

小野田さんというDJがいます。
僕と同学年で、音楽オタク、前々回の座談会にも参加してくれた、元大手外資系CDショップ店員の方です。
懐かしき、名古屋駅にかつて存在した黄金色の文化城「生活倉庫」の名を冠した、その名も「生活倉庫」というイベントを、盟友DJ MINOSHIMA氏と共に主催し、良質な音楽を世間に啓蒙する活動をしておられます。

彼は僕がリリースをする度にSNSで秀逸なライナーノーツを投稿してくれる、心強き理解者です。
そんな彼が、昨日、2025年にリリースしたDJ MOTIVE名義のアルバム、「BIRD MUSIC」のレビューを書いてくれました。
それがまた素晴らしすぎたので、ここに全文掲載したいと思います。

ちなみに今回が連載12回目にして連載最終回です。最終回に人のふんどしを借りるのかお前は。
デカダンス気取りやがってこのエセ芸術家が、などと思われそうですが、そんな罵詈雑言もモノともしないほどに感動してしまったので、ご本人の許可を得てここにコピーアンドペーストさせていただきます。
皆様是非「BIRD MUSIC」を聴きながらご一読ください。




BIRD MUSICを巡る想い

今年の5月
DJ Motiveと生活創庫の打ち合わせのためにNaspecに行ったときのこと
リスニングルームでオーディオ体験する際に、DJ Motiveが用意した1枚のCD-R、それがBIRD MUSICだった。強烈な解像度で再生された’Crows’を聴いたとき、得も言われぬ感情に苛まれた
なんだこれは
その後、音源をもらい、生活創庫にて、DJ Motive に質問しながらBIRD MUSICの試聴会の進行を務めたが、どうにもうまく話せない
イベントの盛況の御礼にレビューを残そうと思っても、言葉が浮かんでは、なんか足りないなと取り消しての繰り返し
たかが音楽、好きに聴けばいい
がそもそも自分のスタンスだが
チルいとかエモいとか
簡単な言葉でおさめたくない
不気味にも感じる危ういこの感じはなんだろうと
CDを繰り返し聴いているうちにいろんな感情や視点がたまってきて、ふと思い出しては再生して、半年近く聴いてきた
その過程をまとめた



⚫️
2 BRAQUE
僕が好きなDJ Motiveのアルバムの1枚がBRAQUEである
BIRD MUSICは映画のサントラ的な構成になっており、BRAQUEと近いものがある
ただBRAQUEはサンプリングとコラージュを駆使して、フィルムノワールな暗黒世界を作っているのに対して
BIRD MUSICは、パッドを鍵盤に持ち替えて、北野武や是枝裕和作品のような虚空ともいうべき広がりのある世界が作られている
ただそれは静寂とはいいがたい
アンビエントである

🟢
3 アンビエント
とはそもそもどういう意味だろう
とふとコーネリアスのアンビエントアルバムを聴きながら、アンビエント特集の2024年のミュージックマガジンを改めて開いてみた
高橋健太郎さんの文章である
アンビエントの名詞形であるアンビエンスは’環境’というよりはその場の”雰囲気”を指す
その音楽はアンビエンスの一部となるとともに、そこにある環境音を音楽的に聴かせる効果を持つ
なるほど
静寂を指すものでもないが
無視することもできる
覗き込めば考えるほどに
興味深くもなる音楽といえるのか
そしてアンビエントとして使われる色は近しいものがある
コーネリアスもBIRD MUSICも
原雅明さんのアンビエントジャズも

🟤
45 yamagchillmusic
BIRD MUSICのアンビエントミュージックを色付けているのが、DJ Motiveの鍵盤とやまちゃんのギターである
ギターの鉄人ともいうべく丁寧に細かく弾いて弾いて弾きまくる姿はヤマンドゥコスタ(こちらもヤマ)のようであり、また付き合う相手を選ばない
same ole chilles然り
今年出たtinjaoさんとAJI-Yさんとの作品も然り
ただ彼のギターの本質はひたすらに弾きまくることで拡散されるアンビエンスだと思う。それがBIRD MUSICでさらに拡散され本領を発揮している


🪽
6 鳥人大系
インスピレーションをえたという手塚治虫さんの鳥人大系
僕が老眼が始まって文庫版は読むのがしんどいからとオリジナルを探してたら多治見の図書館の書庫にありました
進化した鳥が、やがて人間を支配するという架空の未来を描いたSFなのですが、よくもまあ1971年にこんな話考えるなと思った(ラストの内容が現在休載中伝説のバカバトルマンガの元ネタじゃないかと知ったときは驚愕でした)
鳥人大系を読んでからBIRD MUSICの聴こえ方が変わってきた
不気味さの正体がみえたし、可愛らしい曲は悲哀を感じるようになった
特に“Yakou”のエグさが増し、”A Bird Song”は怖さが加わった



⛓️
7 伊勢谷友介
鳥人大系を読むと、”Bird Anthology”で伊勢谷友介さんが言っていることがよく分かる
資本主義の奴隷
鳥という空を飛ぶ自由な絶対的な存在が、利己的で頭でっかちになり、私腹を肥やし、欲をかき、翼を失い、身を滅ぼす
“本来なら、自分が死んだ後の未来を想像し、子孫の未来を想像したい”
そのはずなのに、価値観という言葉では片付けられないような、年寄りがみっともなくのさばって害を撒き散らし、人間の生態系を壊している
僕もDJ Motiveも77年生
どこかあきらめてる冷めてるようでも何かを創造しようとする谷間の世代
後世に繋げていく人間の本来の活動は自分たちの世代が取り戻さなければいけない
まずは大人が頭を空に体を自由に
Level Core MC’sもそう言っている

伊勢谷さんも76年と近い
ちなみに伊勢谷さんは自分が20代前半の頃、ファッションヒーローだった。自分のスタイルがあるひとてこういう人をいうんだろうなと思った。(僕はVISIONのオールドレッドのスニーカーや鬼瓦権蔵みたいなキルティングのジャケットとかいろいろ真似ていた。)なんとなく自分の好きなものを見つけだす感覚もこの頃から始まったように思う
そういう世代

🔵🟣

🦜
89 Poppy Bird
Skin Musicに収録されているPoppyのアコースティックバージョン
冒頭から”美しくあれ”までのあまりにも自然に歌詞が紡がれていく過程が美しくて秀逸な名曲である
同じ曲を繰り返し使ってると思うかもしれないが
深谷彩さんがボーカルだが
ライブではdeadbundy山口くんや
サキちゃんがボーカルをとっているスタイルはブラジルの歌い継ぐ文化に通ずるものがあるし、そもそもDJなんだからいい曲は何度も使う。そういうことでいいと思っている
そして、’美しくあれ’は現代に必要なスタンスである。みっともない品のない老害気狂いが多すぎる。こう言っても分からないのは、分かりやすい娯楽に手を出してしまう欲を抑えられない教養の差だと思う


🟡
10 ラウンジ
アルバムの転換のように配置されている”Humming Bird”という曲。Raymond ScottやPerry and Kingsleyのような遊び心のある電子音が配置されたモンドラウンジミュージック。PCで作られたエッジの強いアッパーな曲に食傷気味のこの頃。心情を音に込める豊かなラウンジミュージックが、アンビエントとともに現代に必要に感じる。こう思うと、誰でもDJになれる時代ではあるが、誰でも音楽家になれるわけではないといいたい。そう思うと、MotiveはAIR(from JAPANではない)ぽい。雰囲気も顔も似てなくはない



🎹
11 坂本龍一
Motiveは、坂本龍一さんが亡くなってから、聴きかえすようになり、ピアノを弾くようになったと。僕も、坂本龍一さんが亡くなってから、没入するごとく彼の音楽を聴き、自分の世界が広がった。晩年のアンビエント期とBIRD MUSICはリンクする。ただ、僕は坂本龍一さんが時々歌う感じが、Motiveとリンクする。寡黙に音を鳴らす男が発する声はグッと来るものがある。”Go Wild”は最たるものである。ふたりとも実はひょうきんでおしゃべりなところもあるが。それは、坂本龍一さんは先日公開されたDiariesでも分かるし、MotiveはNASPECのコラムで端々垣間見える。機嫌がよい大人に悪いやつがいるわけがない



🤲
12 奥底にあるもの
違和感や死臭を内包した”俯瞰的傍観者”のアートに惹かれる
という興味深いコラムをNASPECの第6回のブログ“北野武と坂本龍一”に記載されている。ぜひ読んでいただきたい
ここで僕が思うのは、何も両巨匠にしてもMotiveにしても冷徹で殺伐した人間だからこういうものを作っているわけではないということ。常に冷静に傍観し、自身の価値観で分析し、どういう表現をとるか。その結果、分かりやすいものではなく、聴き手や観覧者の教養を呼び覚ます表現になっているのだと思う。ただ奥底に込められているのは、優しさであり愛情だと思う。死に向き合った坂本龍一さんの残された時間は自分のためではなく伝えることに注力した自由なものだった。今年も僕も家族である愛犬を見送った。見送るまでの時間は辛く長く殺伐としたときもあったが、その奥底にあるものは愛しているという感情しかなかった。愛を伝えるかたちはさまざまである
ただ、真面目は時として狂気ともいえるが、狂気のうえ取る行動は決して愛などではない。壊れているだけ。美しさなどない



⛩️
13 aLFFo
“Kikyu”という曲がある
たまたまアルフォに来ていた若者でボーカルを録音したとのこと。このようにMotiveが経営するアルフォにはさまざまな年代の感性のあるひとたちがフラットに集まる。この場所は音楽と文化の良心が集まっていて、次の世代の才能が生まれてくる。(ちなみにボーカルのひとり、フーコさんはソウルで活躍中。とても素晴らしいことだ。)まさに健康で文化的な人間の営みの場だ。音の鳴る場所でアルフォが他の場所と決定的に違うところがある。
ごはんが美味しいこと
酒で縁が進むとかいう体育会系の話はない。美味しい食事といい音楽と会話が距離を縮めるのである



🔵🟣

1415
こういう場所を作る男が作った
愛の記録
BIRD MUSIC
音楽で世の中の役に立っている
男DJ Motiveである

個人的には激動激闘の2025年だった。それは自分の存在と価値観を作るためだったと思う
その傍らにBIRD MUSICはいつもいてくれた。そういう音楽だったんだと思う。体と心を楽にしてくれた、何となくだが
これを聴けば2025年を思い出す
心ある大人の2025年の音楽

ちなみにBIRD MUSICで得た
ピアノという新たな表現により
Motiveの最強パーティチューン
Get Party Onがライブで最高に心動かすキラーチューンに生まれ変わった。アンビエントとは真逆の愛の表現である
DJ Motive Trioのライブを観ることができたら、ぜひ体感してほしい
2025年2月に大垣でその光景を目の当たりにし、共演できたことを誇りに思う。本当にありがとう。

ATSUSHI ONODA


何度も何度も聴いてないとここまで書けないと思います。
本当にいいライナーは作品を作った当人を感動させます。
これを読んであらためてこの作品を聴いてみたくなりました。
心の友、小野田さんありがとう。

そしてこれまでコラムを読んでくれた皆さん、ありがとうございました。
NASPEC様にはもちろん、aLFFoにも是非遊びに来てくださいね。
とても忙しい中書いていたけれど、息抜きができて楽しかったです。
またどこかでお会いでき



怒られました。
担当に。
他人のふんどしじゃないかこれはと。
このデカダン気取りの下着泥棒がと。

なので、最終回に相応しい着地ができるまでもう少し続けますので、どうか駄文にお付き合いください。
そして誰かいつか書籍化してください。
よろしくお願いします。

MOTIVE



DJ MOTIVE
aLFFo Sounds

DJ MOTIVE /deadbundy/P.C.M
DJ/PROCUCER


アルバム”CURE”がiTUNESのHIPHOPアルバムチャートで最高1位。2008年インディーズHIPHOPベストアルバムHIPHOP, TECHNO, ELECTRONICAなど縦横無尽な作風が特徴。フランスのファッションブロガーGarance Doréが制作したクリスチャン ディオールのweb用ショートムービーにmomigaiの「whales」「senaka」が使用される。
3rd ep 「seaside」はUKのダウンロードサイトHTFRのチルアウトチャート3位。別名義のユニットdeadbundyはcalm、藤原ヒロシなどから支持。ドイツのレーベルHELL YEAHより12’「Lorenz/deadbundy」発売。2020年フリースタイルダンジョンのモンスター裂固とアルバム「omniverse」伝説的なジャズトランペッター近藤等則との共作 “ZEN” 発表。2022年よりテクノアーティストの名義である “P.C.M” 開始REMIX、CM音楽、サウンドトラックなどコラボレーション多数。

instagram
djmotive.deadbundy

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NASPEC

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