JAZZANOVAはドイツのベルリンを拠点としたジャズのグループです。
とは言ってもジャズバンドではなく、プロデューサー4人、DJ2人というクールな構成で、打ち込みのいわゆる”クラブジャズ”と呼ばれるシーンに属するグループです。
JAZZANOVA
※UNIVERSAL MUSIC JAPAN
彼らのオリジナルアルバムも素晴らしいですが、今回は僕にとっての聖書とも言えるMIXCD、98年リリースの”CIRCLES”について。
“CIRCLES”
1. Matsuri No Genso (Hideo Shiraki And 3 Koto Girls)
2. Tema Teimoso (Cal Tjader)
3. Lady Rain (Lexia)
4. Janela De Ouro (Egderto Gismoti)
5. Stolen Moments – Our Enchanted Demo (United Future Organization Feat. Murk Murphy)
6. Fedime’s Flight (Jazzanova Feat. Pathless)
7. Jacob’s Ladder – Nu Yorican Dub (Incognito)
8. Terrace (Pathless)
9. We Who Are Not As Others – Jazzanova Remix (4Hero)
10. Statement (George Duke)
11. Yaad (The Indian Trio / Jazz Meets India)
12. Traveller – 4 Hero’s Dollis Hill Futebol Mix (Talvin Singh)
13. Everybody Sometimes – Raw Deal Mix (Ahmen-Ra)
14. You’re The Best Thing (The Style Council)
15. Leaving For Cala Bassa (Heavy Joker)
16. You’ve Got It Bad Girl (Quincy Jones)
相当な音楽好きでもこのトラックリストの全てを把握してる人はいないでしょう。それはレアな音源ばかりを使っているからという意味ではなく、ジャズ、ソウル、クラブ、ロックと、ジャンルが多岐に渡りすぎている、いわゆる”節操のない”作品だからです。
加えて、ミックスの流麗さ。
BPMに縛られる事なく様々なジャンルを飛び交い、且つ、どこでつながったのかわからない魔法みたいなDJミックスの技術に圧倒されました。
1曲目、早世したジャズドラマー白木秀雄とスリー琴ガールズ(かっこいい名前!)”祭りの幻想”から2曲目アメリカのジャズ、ラテンのビブラフォン奏者、Cal Tjaderによる70年代クイズ番組調の曲への展開で一気に引き込まれ、3曲目Lexiaはフランス発、ソフトロックなレアグルーヴ。6曲目はドイツ発のスパイ映画風クラブジャズでJAZZANOVAの代表曲、7曲目はイギリスのアシッドジャズの黎明期から活躍するIncognito、12曲目はインドのTalvin Singhによるインディアなタブランドラムンベース..そして大団円、アンコール前でみんな大好きThe Style Council。
ジャズマニアにもソウルコレクターにもロック愛好家にもクラバーにも強烈なインパクトを与える事だろうと思います。
この CD、オークションなんかでたまに見かけます。
大体1000円以下です。僕の聖書は安いんです。
“JAZZのDJを謳えば何でもかけていいんだ”当時そんな考えでCLUB JAZZというジャンルでDJをやっていた本当の音楽好きは多かった気がします。
Robert Altman(ロバートアルトマン)という”群像劇の名手”と言われる映画監督がいます。
群像劇とは、複数の登場人物を主人公格として、それぞれの視点からエピソードを描いていく物語構造です。明確な主人公を置かない場合が多く、登場人物一人ひとりにスポットを当てて集団が巻き起こすドラマを描きます。
※AIによる概要
群像劇映画ランキング
ハリウッドから嫌われ、ヨーロッパの映画祭や名俳優から愛されていたアルトマン。
“Nashville”はカントリーミュージック、”The Player”はハリウッド、”Prêt-à-Porter”はファッション業界、”Gosford Park”は貴族、と様々な世界の群像劇を描きました。
中でもカリフォルニアの市井の人々を描いた群像劇”Short Cuts”。
主に短編で人々の心の機微を描いた小説家、Raymond Carver(レイモンドカーヴァー)の短編を切り貼りつなぎ合わせた(サンプリング!)この映画、村上春樹が好きだったこともあり、カーヴァーの小説は読んでいたのですが、あの短編達がこんな風に一つの作品になれるものなのかと、とても感心させられた記憶があります。
そしてラストは僕の映画史上最も驚かされたラストの一つです。
(近年の名監督、Paul Thomas Andersonはアルトマンの影響下にあり、彼の群像劇”Magnolia”のラストは”Short Cuts”のオマージュです。)
僕が群像劇の好きなところは、登場人物に対して過剰な感情移入を行うことなく、過剰な演出で感動を押し売りするというあざとさも無い、起きたことを淡々と”神の目線”で描いてくれるという点です。
様々な世界の”CIRCLES(人々の輪)”を。
“Short Cuts” trailer
良質なMIXCDというのは群像劇なんです。
DJをするという行為は音楽の”ジャンル分け”という馬鹿げた文化を排除し、人種や国境や時代を越えた素晴らしい曲達を集め、散りばめて、時にはShort Cuts(早つなぎ)し、神の目線で一つの芸術を創造するという事なんだと、”THE CIRCLE”を聴いて思い知らされました。
近年ではYouTubeやMIXCLOUDというサービスで世界中のDJMIXが聴けますね。便利な世の中です。
ただ、ファスト映画やファスト音楽みたいに芸術家の作品を”Short Cut(近道)”する世の中にはならないで欲しいな。それは便利さと知識欲にかまけた作品への冒涜ですから。
休みの日くらいはiPhoneを置いてたっぷり時間をとって、Monitor Audio Studio 89の素敵なサウンドでJAZZANOVAとアルトマンの”CIRCLES”を存分に堪能しようじゃありませんか。
DJ MOTIVE
aLFFo Sounds

DJ MOTIVE /deadbundy/P.C.M
DJ/PROCUCER
アルバム”CURE”がiTUNESのHIPHOPアルバムチャートで最高1位。2008年インディーズHIPHOPベストアルバムHIPHOP, TECHNO, ELECTRONICAなど縦横無尽な作風が特徴。フランスのファッションブロガーGarance Doréが制作したクリスチャン ディオールのweb用ショートムービーにmomigaiの「whales」「senaka」が使用される。
3rd ep 「seaside」はUKのダウンロードサイトHTFRのチルアウトチャート3位。別名義のユニットdeadbundyはcalm、藤原ヒロシなどから支持。ドイツのレーベルHELL YEAHより12’「Lorenz/deadbundy」発売。2020年フリースタイルダンジョンのモンスター裂固とアルバム「omniverse」伝説的なジャズトランペッター近藤等則との共作 “ZEN” 発表。2022年よりテクノアーティストの名義である “P.C.M” 開始REMIX、CM音楽、サウンドトラックなどコラボレーション多
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djmotive.deadbundy