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【DJ MOTIVE’s aLFFo MAGAZINE】北野武と坂本龍一

僕は北野映画のファンです。

中でもエリック・サティのグノシエンヌが印象的な和製ヌーベルバーグ「その男凶暴につき」、BGMを一切廃したトラジコミカルな悪夢「3-4×10月」、美しいブルーの映像と暴力が交互に訪れる「ソナチネ」の初期バイオレンス3部作が大好きです。

特に「ソナチネ」はセリフを全て言えるくらい(そもそもあまりセリフないんだけど)
何度も観ました。

色使い、カメラワーク、予測不能な脚本、魅力的な部分はいくらでもありますが、
個人的に北野映画の魅力は、
初期3部作に見られる

「主人公の幼児性と唐突に訪れる暴力的な死」

という部分です。


「叫び」で有名なムンクという画家の作品に「死のにおい」というものがあるのですが、
人は潜在的に”死の匂いがする芸術” に強く惹かれる傾向にあるんだと思います。

僕はいわゆる芸能人やミュージシャンの人が書いたエッセイや自伝の中で、
北野武さんと坂本龍一さんのものを特に多く読んできました。

2人の作品に共通するものがあります。

北野武は特に先にあげた3部作から、
坂本龍一は晩年の音数が極端に少なく、ノイズや環境音を散りばめた「async」などの作品群から、「静寂と暴力性」という強烈な”美しい死臭”が漂っているという点です。

ではその2人の作品はなぜそんな共通点を持っているのだろうと考えた時に思い出したのが、
彼らが経験した「安保闘争」、「学生運動」についてのそれぞれのエピソードでした。


北野武は1965年、明治大学在籍の学生運動に対する自らのスタンスを振り返り、
常にその狂騒の外側から「熱くなってる奴らを冷めた目で見ていた」
と語っています。
(村上春樹さんも同じようなことを言っていました)

坂本龍一は1969年東京芸大在籍時、割と熱心な活動家だったけれど、
ゲバ棒を振り回しながら「造反有利」みたいな聞きかじりの同じ言葉を繰り返す「集団の熱狂」に違和感を持ち始め、運動から身を引いたと語っています。
(うろ覚え)


あらかじめ決められた暴力達への拒絶と、「みんなと同じは嫌!」、というひねくれた「幼児性」が炸裂しています。


そして彼らが身を引いた「熱狂の集団」による革命はあさま山荘事件、赤軍の内ゲバの果てに実質上の崩壊を迎え、自称革命戦士のほとんどは、なにくわぬ顔をして社会に戻っていきました。

集団催眠のような一時の熱病に侵された人々や、武力革命の無意味さをいち早く悟り、
狂騒から離脱した二人。

その後、北野武は「大衆を斜めから見たシニカルな笑い」と「静寂と無言の暴力(映画)」、
坂本龍一は「音楽の実験(実験音楽ではない)」でそれぞれの視点から誰とも交わることなく「死の匂い」がするアートを産むことで生涯戦いを続けます。


そのアートはどちらも難解で、大衆の迎合を拒絶しているかのような作品もあります。


だからこそ最も悲しい共通点として、彼らの作品は先に海外で評価され、(Y.M.Oもソナチネも)半ば逆輸入のような形で日本に紹介されました。

同じ日本人がいち早く彼らの才能に気がつけなかったのはとても罪深いなと思います。

まあ普通はただただ清潔で爽やかで恋したり夢が叶ったりわかりやすく悲しかったり不良だったりするような作品が楽でいいですもんね。

もちろんそういったものの中にも好きな物はたくさんあるけれど、僕は勝者のアートではなく、敗者のアートでもなく、1度体験しただけじゃわからないような、違和感や死臭を内包した”俯瞰的傍観者”のアートにとても惹かれます。
彼らのような優れたアーティストの苦悩や戦いを想像して楽しめるので。


そんな”俯瞰的傍観者”の作品と単純に美しい作品、私(死)的アルバム10選です

Elan Sicroff 「Journey to Inaccessible Places and Other Music」

Glenn Gould「Bach: Goldberg Variations」

RADIOHEAD 「Bends」

Lapalux「Nostalchic」

Brian Eno 「Another Green World」

Jana Rush 「Painful Enlightenment」

The Beach Boys 「Pet Sounds」

Donna Regina 「Slow Killer」

deadbundy 「deadbundy」

Joana Queiroz Quarteto 「Uma Maneira De Dizer」

NASPECには試聴室も完備、
心地よい死臭漂うこのアルバム達をこちらの試聴室で体感してみてください

(試聴予約はこちら byナスペック)

最後に1987年の坂本龍一の作品「NEO GEO」と
1993年公開の北野映画「ソナチネ」のサウンドトラック(久石譲)
はどちらも沖縄民謡 meets HIPHOP。
彼らは割と同時期に共通の「死の匂い」を美しい沖縄に感じていたのかもしれません。

ちなみに沖縄には本土とは違う独自の死生観があるらしく….

長くなるのでまた。

DJ MOTIVE /deadbundy/P.C.M
DJ/PROCUCER 

アルバム”CURE”がiTUNESのHIPHOPアルバムチャートで最高1位。2008年インディーズHIPHOPベストアルバムHIPHOP, TECHNO, ELECTRONICAなど縦横無尽な作風が特徴。フランスのファッションブロガーGarance Doréが制作したクリスチャン ディオールのweb用ショートムービーにmomigaiの「whales」「senaka」が使用される。
3rd ep 「seaside」はUKのダウンロードサイトHTFRのチルアウトチャート3位。別名義のユニットdeadbundyはcalm、藤原ヒロシなどから支持。ドイツのレーベルHELL YEAHより12’「Lorenz/deadbundy」発売。2020年フリースタイルダンジョンのモンスター裂固とアルバム「omniverse」伝説的なジャズトランペッター近藤等則との共作 “ZEN” 発表。2022年よりテクノアーティストの名義である “P.C.M” 開始REMIX、CM音楽、サウンドトラックなどコラボレーション多数。

instagram
djmotive.deadbundy

NASPEC

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